会社を辞めて起業するとき、大きく分けて2つの企業方法があります。
一つ目は個人事業主として起業する方法
二つ目は法人として起業する方法
法人の起業形態は、「株式会社・合同会社・合名会社・合資会社」などがありますが、今回の比較は株式会社と個人事業主を比較します。
個人事業主
自営業とも呼ばれていますが、会社を設立せずに個人や家族や第三者を雇用して事業を行っている形態を言います。
会社を設立せずに、会社にも雇用されずに収入を得ている人は、税務署に開業届を出すことで、個人事業主として登録されます。
個人事業主のメリット
1.設立が簡単
基本的に税務署に開業届を出せば、個人事業主として受理されるので設立が簡単な事が特徴です。
決まった住所があれば、資本金がゼロ円でも設立できます。
個人事業主の開業届と、青色申告の承認申請書を提出するのですが、収入印紙なども不要です。
税務署に郵送して登録する場合、送付用の切手と返信用の切手が必要ですが、窓口に直接持って行けば切手や封筒も不要です。
2.サラリーマンと比較して、経費が多く認められる
個人事業主のメリットは「経費」が認められるという事です。
法人に比べると認められる経費は少なくなりますが、サラリーマンでは経費として認められないものが経費として計上できます。
代表的な経費としては
・スーツ
・自宅兼事務所の場合、家賃・住宅ローン・光熱費の一部
・パソコン
・飲食費の一部
・車とその維持費
・電車代
などが挙げられます。
サラリーマンでは自分の収入から支払いますが、個人事業主の場合は上記の経費を差し引いた金額が収入になるので、収入が同じ場合、生活水準は個人事業主の方が高くなります。
個人事業主のデメリット
個人事業主のデメリットは財産に関連するデメリットがあります。
1.事業で発生した負債の無限責任
簡単に設立できる個人事業主ですが、事業で発生した負債は代表者の負債になるため、事業が破綻し、負債を背負った場合、代表者がすべてを負う事になります。
「会社の資産=自分の資産」
なので、会社の資産がプラスの場合は問題ありませんが、マイナスになると自分の資産もマイナスになるという事です。
株式会社の場合、倒産した際は会社の資産を全て処分して負債を清算すれば、残債がのこっても経営者に支払い義務はありません。
(経営者が保証人になっている負債は除く)
しかし、個人事業主は資産を処分しても残った負債は経営者が支払わなければなりません。
簡単に設立できる代わりに、リスクも大きいのが個人事業主です。
2.事業の引継ぎが出来ない。
個人事業主の資産は経営者個人の資産なので、子供等の後継者に事業を引き継ぎたい場合、売却や相続といった方法をとらなければなりません。
形式は、
・引き継ぐ側が廃業届を提出
・引き継がれる側が開業届を提出
と言う流れになります。
屋号をそのまま使いたい場合は、引き継がれる側の開業届に使用したい屋号を記載します。
無償の譲渡や相続でも、贈与税や相続税もかかります。
また、引き継ぐ側の当期利益がマイナスで、引き継いだ後の利益がプラスの場合でも、損益の通算は出来ません。
(引き継ぐ前と後では違う事業と言う取り扱いのため)
法人(株式会社)
法人の代表格と言われているのが、株式会社です。
現在設立される法人のうち、約8割が株式会社として設立されています。
株式会社のメリット
1.事業の引継ぎが出来る
個人事業主の場合は、事業を引き継ぐことは出来ませんが、株式会社の場合は代表取締役を変更する事で事業の引継ぎができます。
会社を相続する場合は、株式の譲渡なども必要になってくるので、個人事業主と同様に相続税が掛かりますが、生前贈与などで株式を売買する方法で相続する場合、金額に関わらず20%の税率で相続する事が出来ます。
(個人事業の相続の場合は、累進課税となり、最大で55%の税率が課せられます)
2.会社の資産を超える負債は発生しない
株式会社の場合、赤字倒産した場合でも会社の資産を清算後に残った負債は経営者に請求されることはありません。
(経営者が連帯保証人になっている負債がある場合は除く)
3.個人事業主と比較して、経費の範囲が広くなる。
株式会社は経費として認められる範囲も広くなります。
例えば、賃貸住居の家賃は社宅として扱う事ができるため、全額を経費として計上できます。
(個人事業主の場合は、家賃の一部を経費として認められる)
保険料についても、全額が経費として認められます。
個人事業主でも保険料は所得控除となりますが、12万円と言う上限があります。
株式会社のデメリット
1.設立に手間と経費がかかる
株式会社は以前に比べると簡単に設立できるようになりましたが、開業届を送るだけで設立できる個人事業主とは異なり、様々な書類を作成する必要があります。
作成する書類には収入印紙等の費用がかかるため、安く上げても数万円の費用がかかります。
2.運営コストがかかる
個人事業主は設立するだけではコストはかかりませんが、株式会社は存在するだけで、年間に数万円のコストがかかります。
まとめ
株式会社、個人事業主それぞれメリットとデメリットがあります。
どちらで起業するかは、事業の内容によりますが、以下のような基準で考えてはいかがでしょうか。
個人事業主で起業するケース
・小規模な事業を営む(従業員が数人程度)
・年商が800万円程度
・取引先が個人/中小企業
個人事業主のメリットが生かせるのは小規模な事業になります。
小さな規模で、出来るだけ出費を抑えた経営を一人(又は家族)で経営するような形態が適しています。
将来的には大きくしていくけど、最初は出来るだけ手間を掛けたくないと言う場合も、個人事業主として起業し、規模が大きくなったところで法人化する方法もあります。
株式会社で起業するケース
株式会社のメリットは、会社を大きくする場合に大きくなっていきます。
個人事業主は累進課税が適用され、売上額に最大で45%の税率が適用されます。
しかし、株式会社の場合は売上金額が増えても、最大で23.9%の税率が適用されます
自分の給与を含めた利益が800万円以上予想される場合は、株式会社のほうが税制面でお得になります。
また、株式会社は株式を発行しますが、発行した株式を譲渡することで運転資金を得ることもできます。
非上場の場合は、買ってくれる人を見つけるのが大変ですが、社員が居る場合は持株会制度等を利用して株式を売却する事が可能です。